2010年 02月 02日
AN ORIGINAL LAURENT DE BRUNHOFF BOOK BARBAR'S Counting Book |
ぞうのババールは、線の絵本です。
たしかに色使いも独特ではあるのだけれど、何よりも線が、その世界を物語っている。それは、生みの親であるジャン・ド・ブリュノフ、その子であり後継者・ロラン・ド・ブリュノフ、どちらの作品にもいえることだと思います。
どの絵を見ても驚くほどシンプルで、ある意味、あまりかわりばえのしない同じような個体を描いている。キャラクター一つ一つの顔をこれほど描き分けしない作家も珍しいとも思います。
だけど、その線だけは、いつも違うのです。あるときはふくよかで、あるときは消えてしまいそうなほど繊細で、あるときは波立って、あるときはぴんと張っている。そんな線の動きに、すごく心が揺さぶられる。これは、ここで紹介しているロランのものよりも、お父さん・ジャンのほうに著しいのですが、その線一つ一つから、命のライブ感みたいなものが伝わってくるのです。
闘病生活の末に38歳で早世したジャン・ド・ブリュノフは亡くなる直前までこのババールを描いていて、その頃の線の乱れは痛々しいほどですが、でも、この2世代に渡って受け継がれたぞうのババールシリーズに触れていると、そんな命のぎりぎりまで線を引く必要が作者にはあったのだと思います。
そして、ぞうのババールの王国は、自分にとって”永遠”という言葉のイメージに最も近いものの一つです。
写真は、ロラン・ド・ブリュノフによる幼児のための数の絵本。生まれたての感性の中に、この命の線はどんな像を描いていくのでしょう。
by ehonya-kirin
| 2010-02-02 19:18