2008年 06月 26日
復刻版「オズボーン・コレクション」&「ベルリン・コレクション」 |
30年近く前にほるぷ出版から出された復刻版「オズボーン・コレクション」と「ベルリン・コレクション」を、偶然入手することができたので(各一冊ずつですが…)、今日はその話をちょっとしちゃおうか、と思います。
ご存知の方も多いと思いますが、おさらいすると「オズボーン・コレクション」は、カナダ・トロント公共図書館所蔵。児童文学創成期から20世紀のはじめまでのイギリス絵本のコレクションです。いっぽうの「ベルリン・コレクション」は、ドイツ国立図書館所蔵。第二次世界大戦で各地に散逸した絵本を地道に収集し、現在では3万8千点もの規模を誇るコレクションとなっています。
どちらも絵本の歴史を知るに貴重な遺産。この中から数点を選び出し、ほるぷ出版が復刻を手掛けたのが1979年(オズボーン=以後オ)と1982年(ベルリン=以後ベ)。オズボーン・コレクションの編集にはあの石井桃子さんが携わったそう。版型から色調まで、すべてオリジナルに忠実に再現しています。
きりんが入手したのはエリザベス・アプトン作『誕生日の贈り物(1796)』(オ)とゲオルクシェーラー文/フランツ・ポッツィ絵『復活祭のうさぎ(1850)』(ベ)。この製作者の顔ぶれが結構すごいのです。たとえば前者の銅版画のもとをつくったのは、ウェッジウッドなどでも活躍していた当時の人気デザイナー。後者の絵を描いたポッツィは芸術王として知られたバイエルン王国ルドヴィヒ一世の保護を受けた芸術家です。こどものための本に、大人の本顔負けのアーティストが参加している…このことからも当時の芸術的センスの高さがうかがわれます(もっとも階級が高い一部の間でのことなのでしょうが…)。
眺めていると、当たり前ですが、今、これと同じような雰囲気のものを独自につくることは不可能だと感じます。限りなく近く模倣することはできても、まったく中身のないものとなってしまうでしょう。たとえばビクトリア朝の香りとか、これらの本が発する独特の空気は、やはりその時代に生きた人しか作品に吹き込むことができないものかもしれません。言語と同じように絵やアートの絶対的な感性も、時代とともに変化するのでしょう。
それだけに、これらの本を手にとって眺められることを、とても特別で幸福な時間に感じるのです。
by ehonya-kirin
| 2008-06-26 14:58